山形市民会館で『第十八回 山形能』を観る
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数日前に謡いを習っているというお客様から「用事があって行けないので、チケットをもらってくれませんか」と言われ、話を聞いてみると能のチケットだという。
正直、「めちゃくちゃ興味があります」という感じはないが、観てみたい気がしないわけでもない。
そんな訳で、若干、消極的な気分ではあるが観にいってみることとあいなる。

能舞台:山形市民会館で『第十八回 山形能』を観る

能舞台

会場は山形市民会館、13時開演。
狂言は観たことがあるが、ちゃんとした様式の能を観るのは初めての経験。
観客の層は予想通り、かなり高め。
しかし、中にはおじいちゃんやおばあちゃんに連れられた小学生や高校生もちらほら見えた。
やはりというか、その装いからハイブロウな雰囲気を漂わせたご婦人やご老人の姿も少なくない。

市民会館のステージには正面舞台の背景に緑も鮮やかな堂々とした松が描かれた鏡板のある能舞台が設えてある。
自分の席は会場のほぼ真ん中ぐらい。
最前列などは舞台を見上げるような形になり役者の細かな所作などはよく見えたと思うが、自分のような初心者には舞台全体の動きが見渡すことができてよかったように思う。

プログラムが始まる前に出演者から今日の演能についての説明があった。
なんでも演目の『葵上 古式』では舞台上に破れ車をかなりデフォルメした貧弱なフレームのカゴのようなものが置いてあり、これを使用するのが古式といわれる所以であるとのこと。
まぁ、破れ車を記号化したようなものである。
こちらは古式もちろん、そうでない『葵上』も観たことがないので「ふーっむ、そうなのか」と思うだけである。

最初は仕舞といわれる面や装束をつけずに舞う、演目を六つほど観る。
この演目は地元、山形の方々が演じているらしい。

続いて狂言の『舟渡聟』。
ストーリーはわかったがオチがイマイチわからなかった。
狂言は数回、見ているが大げさな所作や言いまわしなどは普通に面白い。
聞くところによると狂言のセリフというのは、話し言葉で室町時代の話し言葉でできているのだという。
室町時代や戦国時代の近畿辺りの人々は、こんな風な話し方をしていたのだろうか…。

休憩をはさみ『葵上 古式』が始まる。

舞台の袖からそろりそろりと入ってくると演者が正面を見据え構えたまま、動かないのにまず驚いた。
いつ動き始めるのだろうと、思って暫くしたところで動き始める。

自分の左隣の席では演目の『葵上』の謡の教本を広げてぱらぱらとめくったりしている中年女性。
この方、「ウンッン」と咳いたり、しょっちゅう帽子を取ったり被ったりと落ち着きがなかった。
この女性の隣ではヴァイオリニストの五島龍と似た小学生が身を乗り出して観ている。
「こういう子供もいるのか」とちょっと驚く。
自分もチケットをいただいた方から『葵上』の教本を参考にして観て下さいと預かったのだが、隣の中年女性に気後れして広げることができなかった。

鼓や「ヨオォ」とか「ヨオーッ」とかいう掛け声(と言うのだろうか?)のリズム強弱や展開には、ジャズやロックのノリやグルーブやカタルシスとも似た高揚感がある。
これは能や狂言に限ったことではないが、何事につけプロというのはたいしたものだと、しばしば思う。
自分にとっては、さして興味のない対象でも、しっかりと惹きつける「芸」と言っていいのか「技」と言っていいのか、とにかくサムシングというものがある。

最後はあっさりしたものである。
出演者が幕口や切戸口から静かにいなくなる。
カーテンコールはない。
そういうものなのかと思うが、そういうものなのだろう。

一度は能舞台と言われるところで、ちゃんと観てみたいと思った。

出演

●仕舞
春日龍神:鷹尾章弘
経政 クセ:山崎正道
杜若 キリ:会田昇
鳥追舟:高橋栄子
鵜飼:松山隆雄   
地謡…小田切康陽

●狂言 舟渡聟:三宅右近、三宅右矩、三宅近成

●能 葵上 古式:梅若玄祥、松山隆之、川口晃平、工藤和哉、御厨誠吾、槻宅聡、住駒充彦、河村眞之介、徳田宗久
        地頭…会田昇   後見…松山隆雄、小田切康陽

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