真室川町の女甑山
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山形県の北部、真室川町から秋田県にかけての県境にある女甑山(めこしきやま)周辺のスノートレッキングにいってきた。
当初は女甑山に登る予定だったが積雪のため断念。
女甑山周辺の名勝沼、大カツラを周るスノートレッキングとなった。

三日ほど前の木曜の夜、いつも山に誘っていただく近所のIさんから「今週の日曜に、山に行きませんか」と電話をいただく。
「どのあたりですか?」と私。
「真室川にのほうにある女甑(めこしき)山、男甑(おこしき)山あたりと思っているんですけど。ついでにナメコでも採れればいいかなという感じで。」
「特に予定もないので、いいですよ。ところで、その山って標高どのぐらいですか?」
「千メートルぐらいかな」
「了解しました」
といった軽いやりとりで行くことを決めたが、改めてネットで調べてみると標高の割に、そうそうお気軽な山でもないらしい事が判明。
少々、覚悟を持って準備を進める。

Iさんに迎えに来ていただき、自宅を出発したのは6時半を少々まわった頃。
雨は相変わらず降り続けている。
これは、登れるのかなぁ…と当方は不安な面持ち。
「雨だったり濡れていたら登るのはやめて、近くの名勝沼まで行き、ナメコでも採って、帰りは新庄の鳥モツラーメンを食べて温泉でも入りましょう」とIさん。
その一言を聞き、少々、安心する。
東根市にでると、クルマは国道13号線を北上する。
向かう北の空はどんよりと濃いねずみ色の雲に覆われている。

新庄市を過ぎ金山町を抜け、真室川町の及位(のぞき)に入ったあたりで国道13号線を左折し真室川の方向へ進路を変える。
雨は止んでいる。
しかし、道や田んぼに雪はないが周囲の山々はうっすらと白く雪が積もっている。
10分ほども行くと「女甑山の大カツラ」という案内板がある。
案内板に従って脇道に入りしばらく行くと、舗装されていない林道になる。
林道の周辺は伐採された丸太がきれいにうずたかく積み重ねられているところが何ヶ所もあり、林業がこのあたりの産業になっていることを実感する。

さらに奥に行くと通行止めの看板があったが、林道に入る手前の集落に住む人に尋ねてみたところ「そのまま行って大丈夫じゃないかな。ずっと道なりに行くと着くよ」ということだった。
林道を15分ほど行くと周りはうっすらと雪が積もっている。
タイヤは当然、まだ、ノーマルのまま。
林道の三叉路にある「女甑の大カツラ」の案内板から、さらに10分ほど行ったあたりから、とうとう雪道になる。

進むに従い雪は増え「これ以上、進むとスタックしたりしてひどい目にあいそうなので、このあたりにクルマを止めて歩いていこう」ということになる。
周りの積雪は10~15センチほど。

林道そばの空き地にクルマを止め準備をする。
時間は9時半ぐらい。
天候は曇り。
寒いことは寒いが真冬の寒さではない。
もはや登山という感じではなく、スノートレッキングという様相。
Iさんの判断で、今回は女甑山と男甑山の中間にある名勝沼まで行き、大カツラを見て帰るというプランとなった。
クルマを止めた林道わきから5分ほども歩くと駐車場があり「甑山登山道入口」「女甑山の大カツラ」の看板がある。
駐車場にクルマはなく、さすがに、われわれ以外に入山する人たちはいない様子。

入口からすぐのところには、「宿坊跡・寺屋敷(鎌倉・室町時代)」と書かれた古い杭と祠が見える。
昔、この辺りは修験道が盛んで女甑山、男甑山そして、周辺は修行の場になっていたらしい。
付近は真室川町の及位(のぞき)という地名だが、その由来をIさんから伺う。
昔、修験道が盛んなころ修験者が宙吊りになって女甑山にある絶壁の横穴を覗く「のぞきの行」という過酷な修行が行われ、その行を修めると位が高くなったそうだ。
そうして「高い位に及んだ」ことから「及位」という、なかなか読めない地名になったという。

登山道の矢島街道は別名、殿様街道ともいわれ江戸時代に秋田の矢島藩、本荘藩、亀田藩の各藩主が参勤交代の折に往来していたという歴史あるものだ。
山の中の細い峠道を参勤交代で使っていたというのには意外な感じを受ける。
周辺には獣たちの足跡が点々とあり、中には登山道を横切る真新しいクマの足跡も2ヶ所で見つける。
この季節は、もうクマも冬眠しているだろうと思い、クマよけの鈴は持ってこなかったが甘かったようだ。
しばしばナメコでもないかなと、倒木の雪をさらってみたりするが雪の下からナメコを見つけるのは難しく途中からはあきらめて先を急ぐ。

葉の落ちたブナ林は視界が開け当初登ろうとした女甑山の迫力ある山容が見渡せる。
女甑山北側の岩壁を眺めながら50分ほど歩くと名勝沼の分岐の案内板がある。
雪の上には点々と先客の足跡があり「こんな日でも、来る人がいるんですねェ」と感心する。
ここからは岩壁の直下まで行き西へルートをたどると10分ほどで名勝沼が見えてくる。
辺りは道がなくピンクのテープを目印に岩がゴロゴロとした場所を登ったり下ったりで進むのに難渋する。
周辺は20センチほど雪が積もっていて岩と岩の隙間に足を落とさないように慎重に進む。

雪景色の名勝沼は静寂に包まれ神秘的。
時おり吹く風で、山の木々がゴォーと唸るが、その音が神々しさに輪をかける。
水は透明で水底がきれいにみえる。
沼の中ほどには、「中の島」と呼ばれる大岩がある。
歩いていると、寒さはどうということもないが、休憩して動かないでいると寒さがしんしんと伝わってくる。
ここで30分ほど休憩して来た道を戻る。

昼近くになって青空が見え始める。
入山した登山口から間もなくのところにあった「女甑の大カツラ」の標識に沿って行くと正面に大きなカツラの木が見えてくる。
「大カツラってこれですか?」と私。
「これじゃなかったような気もするけど…」とIさん。
このカツラの木も大きいことは大きいが、その奥に行くと周囲にロープを張ったもっと大きなカツラの木が見えてくる。
後日、大カツラの手前にある大きなカツラの木は「仏陀木(ぶったぎ)」といわれていると知る。

「女甑の大カツラ」は森の巨人たちに100選に選ばれた大木で樹高25メートル、幹周13.4メートル、推定樹齢は不明と看板にある。
カツラの木は落ち葉が醤油の香りがすると言われている。
試しに雪の下の落ち葉の香りを嗅いでみたが、すでに香りはとんでしまったのか何の香りもしなった。

青空に映える雪のかかった女甑山の南壁は山形の山ではないような迫力のある山容を見せている。
おそらく、葉のある季節なら見通しが効かず迫力ある岩壁も見ることができなかったかもしれない。
12時半にはクルマを止めたところに到着。
帰りは新庄市の「一茶庵支店」という鳥もつラーメンの名店でラーメンを食べて、舟形町の「若鮎温泉」で温泉につかって帰る。

Iさんのおかげで、今回は新雪の中の森を歩き、白く染まるブナ林や沼をみて普段、見ることができない風景と出会うことができた。
結局、山には登れなかった(登らなくて助かった?)が、こうした山歩きもいいものだと実感する。

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