明日で閉幕する「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2014」を観るため、昼過ぎから自転車に乗って山形の文翔館まで行く。
文翔館は元々、大正時代に建てられた山形県の県庁庁舎。
現在は、重要文化財に指定され、豪華な室内や山形の歴史・文化を紹介する展示などが見学できる。
議事堂のホールではコンサートを開いたりといった山形市のランドマークともいえる施設になっている。
文翔館に到着したのは3時をまわった頃。
前庭では、何かよくわからないがワークショップをやっているようだ。
とりあえず、そのあたりはさっと流して中に入ることにする。
入館料は無料。
そうか、無料なんだ。
入り口で案内の女の子から数枚のフライヤーを受け取りながら「2階の左から順に観てもらえるといいですよ」と言葉をかけてもらい中に入る。
お目当ては、一応、梅佳代。
梅佳代は「男子」とか「女子」と言われる年頃のボーイズやガールズを撮らせたら、抜群の写真を撮る女性写真家。
確か、数年前に木村伊兵衛写真賞とかも受賞している。
2階の左側の廊下を行くけど、しばらく展示室がない…と思っていたら、早速、梅佳代の展示室。
中に入るとサービス版からB全判ぐらいまで様々のサイズにプリントされた、たくさんの子どもたちの写真が額装もされず直接、壁に貼り付けてある。
子どもたちと撮影者の距離感が、あまりないのだろう。
生き生きとした子どもたちの自然な表情がとらえられている。
写真には山形一小とか山形六中とかの文字が、そこかしこに見え、どこで撮影されたか一目瞭然だ。
いくつかのプリントにはカメラの撮影日も入っていて、普通のコンデジで撮ったスナップのようにも見える。
そういえば、土門拳も「筑豊のこどもたち」とか撮ってた。
「筑豊のこどもたち」と比べたら、かなりポップだし色彩にあふれているしユーモアもたっぷりだし、なにより「今の子どもたち」だ。
三つの部屋ぶち抜きでの展示は見応えがあった。
あとは回廊をぐるりと回って3階へ昇る。
階段を登ってすぐの部屋は正庁と言われる講堂。
内装が豪華。
高橋由一が山形市七日町の大通りを描いた油彩が掛けてある。
この部屋の外のドアを出ると正面のバルコニーがある。
バルコニーからは山形市七日町の大通りが正面に見える。
と、このへんもサラッと流して次の展示室へ向かう。
3階の展示は平澤まりこ、荒井良二、坂本大三郎、いしいしんじといったラインナップ。
平澤まりこはイラストレーター。
山形を紹介する旅の絵本のようなワークショップをやっていた。
荒井良二は、山形出身の絵本画家で今回の芸術祭の芸術監督。
彼の描いた絵や彼が子供の頃のおもちゃを集めたインスタレーションの展示。
坂本大三郎は千葉県出身のイラストレーターで山伏。
アウトドアの雑誌とかでも名前と山伏という肩書は見たことがあるけど、山伏なのか…?
山形市の東にそびえる瀧山の枯れ木に円空のような仏像を彫って、また瀧山に還すとかで円空仏のようなものを彫っていた。
いしいしんじは大阪生まれの小説家。
数編のA4版の紙の表裏にプリントされた短編が並んでいた。
その後、回廊を回るように常設の展示を見学。
中庭に下りるとGOMAという料理創作ユニットが、山形の保存食のようなものをテーマにした展示。
あまり時間もなくさらっと観て、次の会場へ移動する。
会場は文翔館のほか、東北芸術工科大学や山形まなび館など数ヶ所に分かれて行われている。
行ったのは山形まなび館。
ここは児童の減少が激しい山形第一小学校の校舎を利用してつくられた文化施設。
ここでのビエンナーレ関係の展示は荒井良二と山形新聞のタイアップ企画展示のみ。
展示室に入ると荒井良二による漫画創作プロジェクト「ホソミチくんと五・七・GO!」というワークショップっぽいことをやっている。
近くの旧西村写真館という古い洋館っぽい会場にも顔を出そうと思ったが、時間は4時半を回り、もう、タイムアウト。
今回は、聴く機会がなかったが一ヶ月という開催期間中はライブやコンサートもたくさん開かれたようだ。
今日、ほんの少々、観た範囲の中で感じたのは、予算がないこともあるのだろうが、良くも悪くもかなりゆるい芸術祭だったように思う。
ビエンナーレというからには2年後にもやるのだろうが、あまり上を目指さず、山形市民や子どもたちが参加したいと思うような芸術祭を、ゆるく長く続けてもらえることが身の丈に合っていて、いいような気がする。
それにしても、最近はあちこちの地方都市でビエンナーレとかトリエンナーレとか、競うように開催されているけど、こういう風潮もどうなんだろう…。