東京都美術館で『ウフィツィ美術館展』を観る。
東京都美術館で『ウフィツィ美術館展』を観る
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ウフィツィ美術館展
ウフィツィ美術館展

午後から上野にある東京都美術館で開催されている『ウフィツィ美術館展』に行ってきました。
実を言うと六本木の国立新美術館で開催されている『オルセー美術館展』も、ちょっとそそられたのだけれど混雑具合を考えるなら東京都美術館の方がまだましかなと思いこちらを選択。
とは言え、ルネサンスの絵画というのは、印象派なんかに比べ宗教画が多いことや一部の有名な画家しか知らないこともあり自分にとってはちょっと敷居が高い。
まぁ、でもボッティチェリの本物を見ることができるというのは、かなり魅力的です。

上野には14時を回った頃に到着。
このところ上野動物園をはじめ、美術館や博物館が集まっている上野の森公園には東京に来るたびに訪れている。
もはや、予定がない時は、とりあえず上野に行ってみようかといった具合。
ここに来れば、近くの美術館や博物館でなんかかんかスペシャルな展覧会やイベントをやっている。

慎み深い東京都美術館

上野公園口の改札から、多くの家族連れや若いカップル、老齢の夫婦、外国人の集団の間を縫うようにして、広場の奥にある東京都美術館の赤レンガの建物を目指す。
公園の奥まった場所にある高い木々に囲まれた静かな佇まいは六本木の国立新美術館と違って慎み深ささえ感じます。
階段を下りて入り口を過ぎ、受付でチケットを1,600円で購入。
この展覧会は今日が初日のはずだが、さほど混んでることもなく思いのほかスムーズ。

「屋根のない美術館」と讃えられているイタリアの古都、フィレンツェ。
その、フィレンツェにあってメディチ家歴代の美術コレクションを数多く収蔵し、イタリアルネサンス絵画の質、量ともに最大のコレクションを誇るのが、ウフィツィ美術館です。
この美術館はもともと、メディチ家の当主、コジモ1世の命により画家で建築家のヴァザーリが設計し司法と行政の庁舎(まぁ、役所ですな)として1580年に竣工した。
故に、ウフィツィ(Uffizi)とは英語でいうはオフィス(office)のことである。
ちなみに、この建物を設計したヴァザーリは「ルネサンス芸術の歴史でもっとも影響力のある文書」と言われる「芸術家列伝(レ・ヴィーテ)」というルネサンスの芸術家の伝記を執筆したことでも知られる。
そのウフィツィ美術館の展覧会が行われるのは意外にも、日本で初めてだとか。

会場に入ると、やはり宗教画が多いという印象。
始めの方の展示で目をひいたのがミケランジェロの師匠ともいえるドメニコ・ギルランダイオの「聖ステファヌスと聖ヤコブ、聖ペテロ」という大きなテンペラ画。
テンペラ画というのは、ざっくりいうなら卵で顔料を解いた絵具で経年劣化が他の絵の具より少ないと言われているが、1400年半ばに描かれたというわりには、えらく発色がいい。
と思ったのも、当然で、この作品は修復してすぐの展示だった。

ボティッチェリの『パラスとケンタウロス』

展示の目玉と言われるボティッチェリの『パラスとケンタウロス』は高さ2メートルほどもある大きなテンペラ画。
じっと見ると勢いで筆を走らせるという感じはなく繊細な描き方で、目で見たリアリズムというよりは、頭で描いたイラストといった感じも受ける。
この作品はボティッチェリの代表作でありルネサンスと言わず美術史を代表する絵画と言ってもいい「プリマヴェーラ(春)」や「ヴィーナスの誕生」とほぼ、同時期に描かれている。
二つの作品もウフィツィ美術館が収蔵しているが、門外不出の作となっているらしい。
涼やかな美人として描かれたパラスはローマ神話でいうミネルヴァ。
知恵や理性を司る女神として知られている。
その女神が獣性や本能を象徴するケンタウロスの髪をひっつかまえて、暴れないようにしている。
この状景を描くことで、どんなことを象徴しているかは言わずもがな。
このように題材を聖書ではなく神話から選べるようになったのは当時、画期的であり、ルネサンス(古代ギリシャやローマの復興)を象徴的に意味する絵画と言える。
パラスの頭上にはオリーブが飾られ、白い衣にはダイヤの指輪が三つの紋章が描かれている。
これはボティッチェリのパトロンでもありメディチ家の偉大なる、豪華王と言われたロレンツォ・イル・マニフィコの象徴。
彼が統治した時代にフィレンツェのルネサンスは最盛期を迎えたといわれる。
とは言え、メディチ家と敵対する一族から暗殺されそうになり弟を亡くしたり、ナポリや周辺国と和平を結んだりいろいろ大変だったようだ。

他にもボティッチェリの作品が数点展示されている。
絵画のほかにも、メディチ家に伝わる大きなタペストリーなども展示されていた。

こういった宗教画や、ルネサンスの絵画は小説の『ダ・ビンチコード』に登場するロバート・ラングトン教授じゃなないが象徴学の知識やイタリアの歴史、メディチ家の物語などを知れば、もっと、楽しむことができるんだろうな、などと思いながら観てきた。

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