興福寺で沢山の国宝を駆け足で観た後は、東大寺へ向かう。
自転車で若草山へ向かう通りを5分ぐらい登ると東大寺の参道入り口に到着する。
観光地だけあって参道の入り口周辺は観光客でひしめいている。
ここでも自転車をどこに置こうかと迷ったが、参道入り口付近の邪魔にならないところへ駐車し大仏殿への参道を歩くことにする。
参道の両側にはいろんな出店が並び、さながら縁日の様相。
参道の北側、若草山の側はきれいに整備された庭園が広がって数頭の鹿が草を食んでいる。
小さな子どもを連れたお父さんが子どもに「ここは、動物園の臭いがするねぇ」と言っている。
ふと、足元を見ると、おっとビックリ! 鹿の糞。
よくみると、あちらこちらに黒い豆状の物体が点々と落ちている。
これが犬とかのものなら大変だ。
100メートルほども歩くと彼方に見えていた南大門が間近に迫ってくる。
その巨大な門の扁額には「大華厳寺」の文字。
東大寺は華厳宗という宗派の大本山になっている。
華厳宗は南都六宗と言われる奈良時代の代表的な宗派の一つで、簡単に言うならこの世の物事のすべては結びついているという、今でいうカオス理論のようなものものらしい。
北京で蝶が羽ばたけば、ニューヨークで嵐が起こるのである。
奈良時代、東大寺は大学のようなもので学僧たちが仏教の研究をする場所だった。
しかも唐から来日した僧に教えを請うような国際的な学校であった。
ところで奈良時代の仏教では葬式という概念がない。
そのため東大寺のお坊さんは、近くにある空海寺という真言宗のお寺でお葬式をしてもらうらしい。
南大門を過ぎ、またも100メートルほども歩いて回廊に囲まれた大仏殿を拝観するための受付に到着する。
拝堂料500円を支払い、人の流れに乗りながら回廊に沿って中門の前まで歩くと世界最大級(現在では最大ではないらしい)の木造建築物、大仏殿が正面に見える。
巨大な建物の中央の入口から中に入ると、奈良の大仏と言われる盧舎那仏が神々しく鎮座している。
盧舎那(るしゃな)仏は宇宙の真理を全ての人に照らし、悟りに導く仏だという。
順路に従い、左回りに大仏を一回りする。
裏に回ると大仏の光背と言われる後ろの飾りが金属の棒で後ろの柱に留めてあるのがよくわかる。
大仏の左隣には虚空蔵菩薩、右隣に如意輪観音が鎮座しているがこの二つにして、すでに十分巨大な大仏だ。
お堂の奥の左右にはこれまた、巨大な広目天と多聞天が大魔神のような形相でにらみを利かせている。
お堂の右奥では子連れの家族たちが列を作って柱くぐりの順番を待っている。
先頭のほうを見ると幼稚園ぐらいの子どもが、母親の激励を受けながら柱の下のほうに貫通した穴を懸命にくぐり抜けようとしている。
この柱の穴は大仏の鼻の穴の大きさと同じ大きさ(約40センチ)と言われ、これをくぐり抜けるとご利益があると言われている。
大仏様を一周したところで、今度は同じ東大寺の境内にある戒壇堂へ向かうことにする。