山形市七日町にあるジャズバーの「スイング」が閉店した。
2018年12月29日のことである。
当日は年の暮れにふさわしいぐらい雪がもさもさと降っていた。
雪のおかげで、出掛けるのも億劫だったが、最後ぐらい顔を出さなければと夕方から家を出た。
開業して16年だという。
自分が最初に行ったのは2006年頃だと思うので、10年以上は通ったことになる。
ボトルも何本入れたのだろう。
通い始めた当初は、月2回ぐらいのペースで土曜の夜はライブなども行っていた。
初めて、ここでライブを観た時は「よく、こんな狭い場所でやれるものだ」と驚いたものだ。
「ここにドラムを置くのか」と。
6人ほどが座れるカウンターのほかに、大きなベイマツの一枚板のテーブルが置いてあり、そこは8人ぐらいが座ることができた。
店のスペースは、その大きなテーブルで占められ脇にはピアノとマスター自慢のオーディオ。
空いたスペースは、ほとんどなく通路のようなスペースでミュージシャンが演奏するという具合だった。
そんなわけで演奏中は、店の奥にあるトイレに行くこともできず、セットとセットの幕間に客はトイレに駆け込んだ。
当時、レギュラーのように出演していたのはヴォーカルの女の子とドラム、ピアノ、ベースといったメンバーたち。
ヴォーカルの楽曲はスタンダードナンバー。
インストはビル・エヴァンスの楽曲なんかが多かった。
ヴォーカルの女の子は決してうまいという感じではなかったが頑張っている感があって、好感が持てた。
その女の子は今や仙台や山形では押しも押されぬジャズヴォーカリストになっているらしい。
いろいろあってヴォーカルの女の子のグループが出演しなくなると、ピアノとベースの二人のコンビがメインとなった。
やはり、ビル・エヴァンスの楽曲なんかが多かったように思うが、時々、今どきのジャズなんかも聴かせてくれた。
とはいえ、メンバーの変わらないライブを、そう何度も行くわけにもいかず、というか、行かなくなるというか、まぁ、そうなるよね。
そんな、昔の思い出もあるが、しかし、ここ数年は滅多にライブもやらなくなってしまった。
マスターは、若いころ今の文翔館の裏にあった「アルファー」というジャズ喫茶でアルバイトをしていたというような話も聞いた。
藤沢周平の小説が好きで映画の話や美味いモノなんかも詳しかった。
昔は遊びでヨットにも乗ったりしていたらしく、ヨット仲間からは機関長なんて呼ばれていた。
レコードが5000枚とJBLのオーディオが彼の自慢。
どうやってレコードを集めたかなんて話も聞いたが、ここで書くのは、はばかられるのでやめておこう。
まぁ、頑固な人だった。
「レコードが一番でCDはありでも、音楽をダウンロードするなんていうのはついていけない」なんていう話をよく聞かされた。
プレミアムのつくレコードもだいぶ持っているようだったが、値段の高いスクラッチばかりのレコード(古くて状態の悪いオリジナル盤)を買うより、ちゃんと聴けるレコードを買わないとだめだというようなことをいう人でもあった。
まぁ、いろいろと思い出のある店が無くなるのは寂しいものだ。
道路拡張のためだという。
「時代は変わる」ですね…。